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第3回 永遠の0 [Masaの本棚]

 

   Masa本棚 第3回 永遠の0

 

 買って読もうというほどの関心はなかったので、図書館で予約し、先日、なんと三ヶ月ほど待たされて忘れた頃に図書到着の連絡メールが入った本が「永遠の0」。

 

 人気テレビ番組「探偵ナイトスクープ」等を手掛けてきた放送作家の百田尚樹の小説家としてのデビュー作で、文庫本になってからミリオンセラーになった異色の作品だ。

 

 映画化のことは全然知らなかった。本を手にして読み始めてから、たまたまテレビで「永遠の0」の映画の紹介をしていた。今月の21日封切りとはなんとも自分的にタイムリーだが、原作が良いものでの映画化は、多くの失敗を目にしているので複雑だが。

 

 その著者の作品は読んだことがなかったが、最近の作である「海賊とよばれた男」が気になっていて、それを図書館で予約するときに同じ作家のものをついでにって感じで予約しただけだった。だいたい「ゼロ」の意味も分かっていなかった。ただかなり以前に大阪梅田の紀伊國屋書店で、「永遠の0」の文庫版のキャンペーンなのか、著者自身が作品に込めた思いを語った音声を書店内でなかばエンドレスで流していて、「え~らいべたべたの大阪弁のおっさんやなぁ・・・どんな小説書くんやろ・・・」ぐらいに思った記憶があって、たいして期待もせずに予約した。

 

 しかし、知らなかっただけで・・・これは凄い小説だった。

 

 ゼロとはゼロ戦=零式艦上戦闘機のことで、太平洋戦争で特攻で戦死したゼロ戦搭乗員を祖父に持つ姉弟が、ほとんど何も知らなかった祖父のことを、生き残って高齢になっている、その祖父のことを知っている元海軍兵達を訪ね歩きながら祖父のエピソードを聞くというスタイルなのだが・・・・。

 

 予想外に心が揺り動かされる場面が多くて、ぐいぐいと引き込まれ、クライマックスまで物語のテンションは重く深く上がり続ける。最近出会った小説の中で言えば、タイプは全然違うが髙村薫の「冷血」に迫る・・・・いやいや、ひょっとしたら抜いているかな・・・・ともかく、大傑作小説だと思う。

 

 「特攻」と言う重過ぎる主題を登場人物の様々な立場からの意味付けに、ひとつひとつ心を抉るような、それでいて心を癒すような、得も言えない感情世界の表現が見事だ。特攻という極限の行動に向かう兵士、未だ選ばれず残る兵士、その家族・・・・各々の苦悩懊悩の心情が鮮やかかつリアルに描かれていて、それは著者の取材力と想像力と・・・人間力によるものだろうが、この著者は本当は戦争を経験した世代なのではないかと疑わせるほどの筆致に、ただただ唸るのみだ。

 

 登場人物たちの口を通して語られる時代認識や歴史観には、決して上辺だけではない、実際にその時代の空気を吸っていた者しか言えないようなものも多く、これほどまで偏らず太平洋戦争の庶民の目線からの本質を語ったものも希だと思う。

 

 一筋縄ではいかない戦争という題材を取り上げながらも、根底に流れるひととひとのいのちの交流に激しく心を揺さぶられて、瑞々しい感動を呼び起こさせる名作だ。

 


第2回 今夜、すべてのバーで [Masaの本棚]

 

 

   Masa本棚 第2回 今夜、すべてのバーで

 

 

 「今夜、すべてのバーで」は、あの今は亡き奇才・中島らもの、吉川英治文学賞を取った、まさに隠れた名作といえる純文学作品だ。

 

ユニークでひょうきんな彼の生前の「表」の顔からすれば意外とシリアスであると思われかも知れない内容だ。しかし、彼の「裏」と言うよりむしろ「本当」の顔・・・・アンダーグラウンドでエキセントリックな中島らも本来のキャラクターからすれば非常に彼らしいと私は思える。

 

この小説の前半はシニカルな乾いた雰囲気を漂わせながらも知らず知らずの内に血の通った人間を描き、掘り下げてゆく紛れもない良質の文学作品だ。純文学とはいえ、持ち前のユーモラスさが功を奏して、内容の割には読みやすいですので、誰であれとっつきやすいと思われる。

 

テーマはアルコール依存症だが、その重いテーマに読む者を興味深く引き込み、読ませ、根底にはシリアスなメッセージが流れ、終盤はとても劇的な展開になり、読後感が非常に清々しい作品だ。

 私はそれを通算四回読んだのだが、四回とも落涙してしまった。

 無論二回目以降は展開が分かっているのにも関わらず、それでも落涙してしまうのだ。これは宮本輝の「錦繍」にも同じことが言える。

 

また、感性が服を着て歩いているような中島らも自身のアルコール依存症の経験から、迫真の筆致、渾身の描写で描かれている部分は、いわゆる「人生の元手」が掛かっている。

自叙伝的な作品なので、深いのも当然かも知れない。

 

彼には多くの多様な作品群があり、私も全てではないが結構読んだ。しかし、その中でも文学的純度の高さと人間の胸に迫る熱いものを、これでもかこれでもかと織り込んだこの作品が一番好きだ。

 

内容も満足いくものである上に、作品の品格を決定するエンディング部分・・・・・・最後の場面の鮮やかな洒落た終わり方には、にやりとしながら唸ってしまう。

 

人間のドロドロしたものを題材にしつつも透明感のある、不思議な小説だ。

 

 

 


第1回 神々の山嶺 [Masaの本棚]

  Masa本棚 第1回 神々の山嶺

 

本業の加速度を増す流れの中で、なかなか英語に特化するとブログを更新できないし、英語喉小説も今はあまり進めないので、英語からちょっと離れるが・・・・手軽に書ける、自分の読書歴の中から感銘したものを「ネタばれ無し」で紹介する書評もどきのカテゴリーを始めようと思い立った。

 これも文化繋がりでよろしくです^^

 

夢枕獏著「神々の山嶺」(以下「神々」)は数十年に一度出るか否かの傑作小説であり、純度の高い山岳文学でもあり、またエンタテインメントの要素を全て備えた作品でもある。

 真に良い小説はジャンル・カテゴリーを超えて感銘させ得るものだが、まさにこの一著はそうであろう。

 

 著者・夢枕獏自身は「陰陽師」「キマイラ」「飢狼伝」等のSF寄りの作品で知られるが、「神々」はまさに本格的な山岳小説でもあり、骨太の現代文学でもある。

 

 我々が「生きる」ということと「死ぬ」ということ、「愛する」ということと「別れる」ということの折り合いをつけることを迫られた時、人はこうやって生きるべきであり、また死ぬべきであり、こうやって愛するべきであって、このように別れるべきであるという著者の普遍的な思想を盛り込みつつ、決して押し付けにはなっていない。

 

むしろ一般人にとっては、ああそんな風に生きられたらいいな、あんな風に死ねたら本望だな、という羨望と渇望を与えることによって、何らかの触発や刺戟を与え、だからこそ私自身がそうであるように、多くの愛読者が人生の節目や悩みにぶつかった時、壁が立ちはだかる時等に、再読三読したくなる一著なのだ。

 

分厚い上下二巻ものだが、私自身すでに五回以上読み直している。再読系の書としては宮本輝著「錦繍」が「静」の王者、この「神々」が「動」の王者だ。

 

余談だが中島らも著「今夜、すべてのバーで」はまた違った意味で再読系だが、その話はまた後日に譲ろう。

 

「ビバーク」「トラバース」「ハーケン」「コッフェル」「カラビナ」「デブリ」等々、山岳の専門用語がふんだんに出てくるし、しかも一切説明はない。

 だから初めて読んだ時は面食らったが、それはそれで分からないなりにニュアンスを感じて読み進めば自然と意味合いが全て理解出来て、頑張って読み終えれば誰しもいっぱしの山岳通になれてしまうところも非常に面白いと感じる。

 私や友人の一人もこれを読んで、それまで理解不能だった死を賭して困難な山に挑む登山家の心情が、やっと理解出来たのだ。

 

著者・獏自身がチョモランマ(エベレスト)に挑戦したこと、その途上で高山病にも罹ったこと、またモデルとなった存命している一流の登山者たちへの取材、これらが作品に十二分に折り込まれていて、フィクションではあるが迫真性に於いてはドキュメンタリー小説のようだ。

 

また「そこに山があるからだ」の名言を残し、チョモランマの露と消えた英国人登山ジョージ・マロリーへの大なる敬意と深い追悼の想いが籠められている。

よく誤解されているその名言の知る人ぞ知る真意も、この作品を読めば理解できるようになっている。

 

 

読後感は非常に爽やかであり、心病める人には心の健やかさを、悩める人には立ち向かう静かな勇気を、恋する人には真の愛とは何かを、各々の境涯に応じて与えてくれそうな、著者の精神の強靭さに裏打ちされた、人間への優しい眼差しがとても心地よく胸に染み入ってくる。

 

 

人生に何かしら迷う人には、一読に値する作品だ。

 

 

 

 


キンドル本 [随筆 喉の旅]

小説 喉の旅」のキンドル本出版のお話があり、やってみようと思っとります。

しかしながら今、本業の方が半端ない忙しさで・・・・

本編の続きも執筆出来ない状態ですから、ちょっと仕事が落ち着いたら・・・になりますが。

気長にお待ちくだされ~


小説喉の旅Ⅱ第一章 羅列(6) [連載小説]

 

 

小説 喉の旅 第二部

 

 

~ 第一章 羅列 (6)最終回 ~

 

 

 

収録はさらに進み、個性派俳優の五嶋智仁に天神がオバマコピーを指導するくだりとなった。

 

天神は、舞台もこなす役者である五嶋は喉ブレーキが全開、つまりほとんど掛かってないんじゃないかと期待をしていた。ところが、意外にも、天神が期待するほど喉ブレーキ全開ではなかった。その事を天神は少し残念に思った。しかし五嶋は五嶋なりに、なんとか喉をリラックスさせる感じを表現しようと一所懸命に英語スピーチに取り組んだ。そんな中、五嶋は自分を客観視し、苦笑しながら言った。

「なんだか、酔っ払ってるみたいだね、こりゃ・・・」

それを聞いて天神はすかさず言った。

「そうそう、そうなんです!酔っぱらいの人は上機嫌で喉がリラックスしていて、話し方もネイティブが英語を話す時と同じ感じなんですよ!」

この絶妙な切り返しに「なるほど!」と思わせるものを感じたのか、会場から好意的な笑いが自然と起こった。

「酔っぱらい」がオーディエンスに受けたこともあり、天神のコーナーの締めくくりが、出演者にビールの大ジョッキが配られての乾杯だった。

 

この日収録された番組は、予定通り2009年12月18日に全国ネットで放映された。

 

天神の出番は3分30秒ほどであった。彼は覚悟はしていたものの、短いなぁ、というのが正直な感想だった。

収録が2時間に及び、それ以外のコンテンツもあるので、それぐらいにはなると予想はしていたが、彼が残念なのは、伝えたかった部分の多くがカットされていたことだ。なによりも「英語喉」を紹介できなかったのは取り分け残念だと天神は思っていた。しかしながらNHKの番組なので、それは仕方のないことでもあった。

 

ともあれ、天神の挑戦は英語学習者や関係者の反響を呼び起こした。

 

当時はまだ少数だった英語喉実践者にも、番組を見ていた者は数多くいた。例えば、英語喉の著者上川一秋も認めるトップレベルの実力者「長崎の空」と名乗る学習者も感銘を受け、天神のブログに早速コメントを残していた。

その中では彼は天神の堂々たる立ち振る舞いや見事なオバマ・パフォーマンスに敬意を表し、また本来伝えたかった部分がきっと編集で薄められたであろうことを踏まえて、それでもメジャーなメディアで発信出来た事を歓び、彼自身も天神のセミナーを受けてみたくなった・・・・などの心情を吐露していた。

 

また当時はまだ英語喉実践者になっていなかった予備軍たちの多くも、番組を観ていた。

 

神戸に住む雅志もその一人である。

彼は天神が英語を喋るのをたまたま観て、こう思った。

「へぇ・・・なんかめっちゃネイティブみたいに喋るなぁ、このにいちゃん」

彼の妻や二人の子供たちにも、天神によるオバマ・パフォーマンスは受けていた。

 

雅志が英語の学び直しを決意するのはそれから1年と1ヶ月後のことだ。

そして学習開始からほどなく英語喉に出会い、それを始めるかどうかを考えている時に「英語ではなさナイト」で見事にネイティブっぽい、「日本人離れした」英語を喋っていた「オバマのにいちゃん」がTOEIC満点講師天神智雄であることを知った。

 

(このにいちゃんがやってるんなら、この英語喉も・・・やっぱり本物かも・・・)

 

英語喉著者、上川自身のすでに膨大な本数になっていたYouTubeビデオでやる気になりかけていた雅志の背中を、天神の一件がさらに後押ししたのだ。

 

その雅志は実践を始めてすぐに大確信を得て、上川のネット上のコミュニティにも絡んでいった。喉発音を始めてから聴き取りがぐんぐん向上し、またこちらの喋る英語も、文法的に未熟な部分はあってもばんばん通じるのが面白く、スカイプを通じて英語ネイティブの友人を精力的に作った。彼らとの会話、対話が面白くなり、学習開始から5ヶ月後には「Masa Radio」というネット上の5分間の番組を開始した。

一般の日本人であり英会話ビギナーである雅志が、一般の英語圏の外国人に英語でインタビューするという画期的な試みであった。雅志の、どんどん恥を潔く曝しながら、英語喉に裏打ちされた実践の中で英語を身につけようとする姿勢に感銘を受け触発された英語喉著者、上川自身も「英語喉ライブ」というネット上の番組を後に展開することになる。

また天神も上川のブログで度々話題に上る「Masa Radio」を聴いてみた。雅志の荒削りながらも積極的に英語喉を使って、英語ネイティブとのやり取りを発信していく果敢な行動に感銘し、好感を抱き、SNSmaxiで天神の方から彼にメッセージを送って繋がったのだ。

 

雅志は英語喉実践のひとつのきっかけをくれた天神からのエールを大変嬉しく思い、「Masa Radio」の2011年7月28日分のゲストに天神を迎え、また上川がそれを自身のブログで紹介して、今後の日本人の英語学習の方向性についての発言をしたりした。

(参考:http://nippondream.com/eigonodo/archives/248 )

 

その、喉実践者が英語ネイティブと絡むネットラジオの潮流は、やがて多くの英語喉実践者が、英語ネイティブと絡むポッドキャストを作る流れとなり、水嵩を増していった。

 

これも遡れば、2009年12月18日に天神が点じた灯が燎原の火のように拡がった中のひとつと言えよう。

 

このように、上川とジーナが世に出した英語喉を、天神のように圧倒的に実力のある英語喉実践者が大きいスケールで発信する時、それは多くの真摯な学習者が持つ習得への意欲を大きく揺さ振り、人から人へと伝播し絡み合い、やがて壮大な羅列を形成しながら未来に向かって拡がってゆくのである。

 

 

( 小説 喉の旅 第二部 第一章 羅列 終 )

 

 

全話目次

http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-23-2

 


「小説 喉の旅」バックナンバー [随筆 喉の旅]

近々、第二部 第一章 羅列を完結させる予定だ。

だいたい出来上がってきてるんだが、なっかなか更新できないので、バックナンバーを読んで待っていてくだされ(笑)

まだ最初から読まれていないかたがたも、どうぞよろしくです^^

 

小説 喉の旅

 

まえがき
http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-09

~ 小説 喉の旅 ~

   

プロローグ 刑務所のリタ・ヘイワース
http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-08-1

~ 第一部 ~ 

第一章 木中の花

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-13-1
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-14
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-17-1
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-18-1
(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-19-1

第二章 雪解け

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-21
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-23
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-24
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-25
(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-25-4

第三章 緞帳

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-26-2
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-28
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-30
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-31-2
(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-01-3

第四章 地動説

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-02
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-03
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-04
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-05-1
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-06
(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-09-07

第五章 未萌 

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-20-1
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-21
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-23-1
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-24
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-25
(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-26

第六章 旅装

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-10-31-1
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-01
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-02
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-03-1
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-05
(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-09

~ 第二部 ~ 

第一章 羅列 

(1)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-10-3
(2) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28-1
(3) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-12-25
(4) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-12-28
(5) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06-1

追記:6/18に第一章最終回をアップしました↓

(6) http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2013-06-18-1




小説喉の旅Ⅱ第一章 羅列(5) [連載小説]

 

小説 喉の旅 第二部

   

 

 

~ 第一章 羅列 (5) ~

 

 

 

 

(うへぇ・・・テレビで見る人らの、ホンマもんやで、これ・・・・・)

 

そう思いながら、今をときめく個性派俳優の五嶋智仁、人気モデルの石切もえ、日中露の血が流れるタレントの有木まいみ、日本とカナダのハーフのタレントの鏡レイラ、碧井アナウンサー、そしてアメリカ人でありながら流暢な日本語を操るお笑い芸人ザックンを見回した天神は、しかしながら意外と緊張していない自分自身を感じた。

 

(8月の神戸TOEICまつりとか10月のエスポスピーチコンテストのときの方が緊張してんけど、これ不思議やなぁ・・・。TOEICまつりは聴衆が20人ぐらいやったしスピーチコンテストは40人ぐらいやったのに対して今日は1000人は超えてるで・・・。どない考えても今日の方が緊張するはずなんやけどなぁ・・・)

 

天神がそんなことを考えている最中に時計は午後6時を指し、インカムを通してディレクターの裂帛の気合いが入った掛け声が掛かった。

2009年11月11日、全国ネットの人気英語トークバラエティTV番組「英語ではなさナイト」の同年12月18日放送分の一発撮りの公開収録の始まりだ。

 

 

その日の午前中に天神は、番組収録のために京都にあるK産業大学の会場に入った。

 

午後からは天神同様の素人の出演者数名とザックン、そして碧井アナウンサーだけで段取りの確認をし、大まかに各人が話す内容や立ち位置を詰めて、ひと通りの簡単なリハーサルを行った。

 

3時を過ぎると本番に出演するレギュラー陣やゲストのタレント達がひとりまたひとりと登場し、全員が揃うと全体的なリハーサルを行った。5時を過ぎて1000人を超えるオーディエンスを中に入れ、本番の前説が行われた。

 

説明によると本番は、6時から2時間前後は録画されるという話だった。

それを聞いた時に天神は、どうせ喋ったうちの一部しか使ってもらえないだろうと思い、それなら可能な限り長く映ってやろうと考えた。

 

番組は進行し、天神もその一人として登場するユニークな英語学習法のコーナーとなった。

 

一人目は、LとRの発音矯正のための器具を開発したという男性。

 

二人目は、輪ゴムを両親指に掛け、一定のリズムで平泳ぎのストロークをしながらそれに合わせて『内容語』(英文法上で事物の名称、性質、動作、状況などを表現する語のことで、文法構造上の関係を表すために働く『機能語』に相対する単語)を読むことにより英語のリズムを身に付けさせるという持論を唱える女性。

 

三人目は、ボサノバに合わせて両手を別々に動かしながら、それに合わせて話すことによって英語を受容する脳を作るという説を主張する男性。

 

続々と続くユニークな学習法に出演者もオーディエンスも興味津々といった感じで徐々に盛り上がる中、収録開始から数えてほぼ1時間が経過していた。そのコーナーの五人目でありトリとして控えている、音声認識による翻訳機を開発しているという男性を残して、いよいよ四人目の天神の出番となった。

 

彼はまず簡単に自己紹介をした。それからすぐに、コピーイングのデモンストレーションとしてオバマ米大統領の勝利宣言の最後の部分を、大統領自身の映像を流しながら、彼が声をあてるという実演をして見せた。いきなりの天神の真骨頂のお披露目だ。

 

これは会場全体が湧いたし、とりわけ舞台上の出演者達にも受けたようだ。

彼は殆どモニターも見なかったのだが、それなりにタイミングもあっていたようで、和やかにざわめきながら口々に褒める出演者達の中から「すっごーい!映像とピッタリ合ってたぁ!」や「マジでネイティブみたい!」などという声も聞かれた。

 

それを聞いて天神も少々ほっとした。続けて、英語を喋る時のネイティブの喉の使い方を難しい言葉を避けて彼なりに説明した。

 

彼はスペルに惑わされずにネイティブの発音をよく聞いて、そっくり同じように言うことを説いた。そして重要なポイントとして「喉を開きっ放しにして喋る」こと、つまり英語喉でいう「喉ブレーキを外す」ことを力説した。

( 『喉ブレーキ』については以下を参照のこと ※小説喉の旅(第一部)第二章雪解け(2)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22(6)http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-25-4 )

 

この喉を開くというアプローチに関しては、英語ネイティブであるザックンと日加のハーフである鏡レイラが肯定するコメントをしてくれた。

レイラからはまた、英語で話す時の方が日本語で話す時よりも低い声になる、という発言もあった。これは英語喉でいう「ゲップエリア」を使うことが多いため、英語では声が自然と低めになることの証左である。

この、日本語も英語もネイティブと言えるレイラの発言によって、会場全体に、天神の話に大きく信憑性が加えられた雰囲気が漂ったので、天神も嬉しかった。

 

さらに天神の英語講師仲間の女性からもらったヒントを披露した。

英語が喉で息を止めずに履き続けながら喋るのはお坊さんの読経と同じだ、という考え方であり、これはディレクターがかなり気に入っていたので、なんと会場全体で般若心経の唱和に挑戦した。

会場は盛り上がり、天神も自信を持って続いてのデモンストレーションに移ることが出来た。

アメリカ映画『Back to the Future』の一場面のセリフのコピーがそれである。

 

映画の中で1985年にマイケル・J・フォックス扮する主人公マーティがバンドのオーディションに落ちた後の、公園でのワンシーンだ。

 

天神は一気に喋った。

Save the clock tower! Save the clock tower. Mayor Wilson is sponsoring an initiative to replace that clock. Thirty years ago, a lightning struck that clock tower and the clock hasn't run since. We, at the Hill Valley Preservation Society, think it should be preserved exactly the way it is as part of our history and heritage”

 

聴き終わるとザックンが突っ込んだ。

「このセリフはなんですか?」

「バンドのオーディションに落ちたマーティが、恋人ジェニファーと公園のベンチでええ雰囲気になったところにズカズカーと割って入って募金を求めるおばちゃんのセリフです」

 

天神の笑顔から出るその答えに、会場からどっと笑いが起こった。

ザックンも笑いながらもさらに突っ込んだ。

「主役のマーティじゃなくて、どうしてまたこの超脇役のセリフを?」

 

天神はニヤッと笑みを浮かべて答えた。

「いやいや、彼女はそのシーンの主役なんです。もしそのおばちゃんが居なかったらマーティが1955年から帰ってこられへん、めっちゃ重要な役どころなんですよ」

 

映画のストーリーを熟知している人にしか分からないマニアックな、しかし会心の受け答えをした天神だった。

飄々とした天神の好感が持てるトークによって、会場が和やかな笑いに包まれた。

 

残念ながらこの『Back to the Future』のコピーイングの部分は放送の本番では使われなかったが、天神が自らの出番の収録中で、最も気に入っているくだりであった。

 

 

 

(続く)

 

 

 

続きは

http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2013-06-18-1

全話目次

http://nodo-journey.blog.so-net.ne.jp/2012-08-23-2

 


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